第1回 指定都市安全・安心まちづくりワーキング会議 議事要旨

1.日時
  平成18年3月17日(金) 午後2時〜5時
   
2.場所
  指定都市市長会事務局 会議室(市政会館6階)
   


3.出席者
  岩岡敏文(座長:横浜市)、吉田将行(札幌市)、鈴木裕一(仙台市)、新井正浩(さいたま市)、岸本直人(千葉市)、濱舘幸二(川崎市)、長橋浩幸(静岡市)、茂谷誠(名古屋市)、澤井広幸(京都市)、谷本良司(大阪市)、角田弘樹(神戸市)、岡原正典(広島市)、白濱晴夫(北九州市)、金丸勝也(福岡市)、安福真敏(堺市)
谷口正和、馬渕幸男、田中正美(指定都市市長会事務局)
樋村恭一、橋本正法、土居洋平(地域交流センター)
   
4.議事要旨
     今回の会議では、まず、プロジェクトに必要な前提としての知識の共有化をはかるために、メンバーに対して、プロジェクトを巡る動向についての話題提供を行った。その後、事前照会の結果を踏まえて、プロジェクトの3つの重点課題に関連した各市の課題の洗い出しを行うとともに、プロジェクトの実施スケジュールやホームページの開設についての検討を行った。
     
(1)プロジェクトを巡る課題について (話題提供:地域交流センター(樋村))
  ○「総合的」な防犯対策―防犯環境設計―を
   防犯まちづくりは、物理的側面(建築で物理的に犯罪を抑止する等)と社会的側面(地域コミュニティのように社会的なネットワークを用いて犯罪を抑止する等)の両面から総合的に行うことが重要だ。このことは「防犯環境設計」(C. Ray Jeffry)と呼ばれており、そこには4つの原則‐対象物の強化、接近の制御、監視性の確保、領域性の確保‐がある。
 対象物の強化とは頑丈な鍵やガラスを用いる等、対象物を物理的に強化することであり、接近の制御とは、建造物への出入りを管理しながら犯罪者が被害対象に近づきにくくすることを指している。また、監視性の確保とは、見通しを確保することで多くの人の視線を得て、犯罪をしにくくすることを指している。そして、領域性の確保とは、当該エリアへの意識を向上させることで、犯罪の発生を抑えるということである。
     
  ○防犯まちづくりの3つのポイント
   さらに、防犯まちづくりを進める際には、「関係する主体間の連携」「地域的特性の重視」「長期的視点」の3つも重要である。「関係する主体間の連携」とは、住民団体、地方公共団体、学校、警察等の防犯に関連する組織同士の連携はもちろん、各団体の中の部署間の連携も重要であるということである。また「地域的特性の重視」とは、防犯対策は住民意識、建物やまちの形状、発生している犯罪によって異なるものであるから、地域の実情を踏まえなければならないということである。そして「長期的視点」とは、都市計画の段階から防犯の視点を入れるなど、ある程度長い単位で防犯を考えないといけないということである。まちの体質改善には時間がかかるのである。
     
  ○犯罪空間の分析から対策を
   また、実際の防犯の取組みを考えるにあたっては、犯罪発生空間の実体を分析して対策を立てる必要がある。地域・街区の状況に応じて発生しやすい犯罪―ある街区では空き巣が多かったり、ある場所では引ったくりが多かったり―があり、それぞれに対応した対策が必要なのである。
     
  ○安全と安心は異なる
   ところで、本プロジェクトでは「安全・安心」と名前がつけられているが、当然、このふたつは異なるものである。防犯においては、この違いを認識することも重要だ。「安全」というのは、犯罪企図者からみて「犯行しづらい」空間のことだが、これは、一般住民が犯罪に遭遇する不安を喚起しない空間―安心な空間―と必ずしも一致していない。
     
  ○まとめ
     付言すれば、防犯は単体の強化から全体の強化という流れにある。各々の建物、公園、道路等の単体の強化は重要だが、それが周辺に与える影響も考えた対策が必要になっている。公園の防犯対策が周辺住宅への空き巣対策につながることもある。そこで出てくることがハードとソフトの両方を踏まえた防犯力の強化であり、行政にはこれを踏まえた条例の整備や都市計画が求められている。日本は防犯研究の実績が少ないが、海外には様々な理論に基づいた対策が講じられている。日本にそのまま当てはまるわけではないが、少なくとも理論と根拠に基づいた防犯対策を進める必要がある。
     
(2)重点課題に関する各市の取り組み状況と課題の洗い出しについて
  ○事前照会の結果について
    (事務局) 
 課題1の住民参加型まちづくりについては、大きくは「地域住民の意識格差」「行政と市民/行政組織間の連携」「財源の確保」の3つの課題が挙げられている。また、課題2の繁華街における防犯については「行政・警察・市民の役割分担」「対策施行による課題の発生(手口の巧妙化、空き店舗対策等)」「地域の中での意見の相違」「財政負担の問題」「まちづくりのビジョン」という5つの課題が挙げられていた。課題3の安全・安心に関する制度改革については、「行政と警察の役割分担」、「各種活動・委員会の役割分担や連携」が課題として挙げられていたが、意見にはかなりばらつきがあった。特に権限の移譲については、積極的・消極的両方の市があり、意見が割れている状況である。その他、各市の取組みについての情報交換、防犯カメラ設置についての情報交換、まちづくり施策と制度の関係を扱うべきという意見があった。
     
  ○防犯ディグについて
    (福岡市)
 「ディグ」とは「図上訓練」のことで、軍隊で行われていたもの。それを防災で取り入れるようになり、福岡市では防犯でも取り入れられるようになった。具体的には6,7人のグループ毎に地図を広げて安全な場所・危険な場所を検討して発表しあい、地域情報の共有と安全・安心についての啓発活動を行っている。また、これには警察OB2人、警察からの出向者、市職員の4人が担当として行っており、地域の犯罪特性も踏まえたシミュレーションを実施している。
     
  ○「すすきの条例」と連絡協議会の設立について
    (札幌市)
 平成17年12月1日に「すすきの条例」を施行。「アダルトビデオへの勧誘」「性的サービスを提供するお店の客になるように人を誘いかけること」「ポスターや看板にピンクビラを貼る行為」の3つの迷惑行為を禁止(違反者には50万円以下の罰金と拘留)した。直後から劇的に効果があり、「カラス族」は一掃された。これにより、すすきのの様子は激変した。
 市民の反応もよく、地元の防犯団体の呼びかけで新たな協議会を立ち上げ、防犯対策とまちづくりを更に進める動きもでてきた。すすきの条例そのものも、地元の5,000名の署名をもとに作ったもので、地域の防犯への関心は高い。新しい協議会の取組みの中身はこれから実践するところである。
     
  ○防犯カメラについて
    (横浜市)
 テロ予防という趣旨で「安心カメラ」を市内6ケ所5地区に250台設置する動きがある。プライバシーについてはガイドラインを設置して対応している。
     
  ○「安全・安心条例」について
    (仙台市) 
 当初は平成18年度以降に条例を検討する予定だったが、市長の目玉政策ということで平成18年度施行になった。条例には市民や行政、事業者の責務を示し、推進協議会を進めることなどを記載した。これに基づき計画を18年度中に策定する予定。歩きタバコの規制、ゴミのポイ捨てへの罰金などの要望が強いが、市民の意向を調査して検討する予定。さらに、各区での推進団体の設置、重点地区の設置等を予定している。
     
  ○財源確保・市民活動への助成
    (北九州市)
 行政としてどこまで予算をつぎ込むべきかで判断の難しい所もあるという。財政当局では、防犯は予算の目玉として優先的に考えてはくれるが、地域の防犯活動を活発にするのは、お金だけではなくて仕組みということもある。

(名古屋市)
 安全・安心で快適なまちづくりを目指して条例を制定し、学区単位で住民による連絡協議会を設置し、その団体に対して最大50万円の補助を行っている。防犯だけではなく、地域の事情に応じて「生活安全まちづくり」「防犯」「交通安全」「青少年の健全育成」「防災」などのメニューを用意している。防犯については、261学区のうち217学区で防犯パトロールを行っている。他にも、地域安全マップ作成の取組みなども行っている。ただし、学区毎の協議会は条例制定以前からあり、防犯のために新たな組織を作ったということとは異なる。

(京都市)
 平成16年度から市内227学区全てに自主防災、PTA、自治会等を束ねる組織を作った。そこに対して3年間を目処に補助金を出している。市の方針で「安全・安心」ということも入っているが、これは食の安全・安心まで含めているので、防犯に特化しているわけではない。課題としては、今は地域に様々な事業の実施が求められていて、受け皿となる自治会が飽和状態になっている。窓口となる区役所に不満もあがってきている。事業の取捨選択が必要である。また、この分野での警察との役割分担(お互いどこまでやるべきか)も課題だ。
     
  ○子どもの安全・安心について
    (神戸市)
 緊急対策として「市民安全安心推進条例」をつくり、子どもの安心を確保しようとする動きがある。これに関連して、最近は学校の先生が地域の事情に明るくない場合もあり、地域のキーパーソンが誰かがわからないこともある。そこで、学校と区役所との会合を増やし、地域の事情に明るくない教師に対して区役所が相談窓口となるなど、学校の先生へのサポートも行っている。
     
(3)プロジェクト実施スケジュール・ホームページについて
  ○プロジェクト実施スケジュールについて
    (事務局)
 次回のプロジェクト会議迄を目処に、本日の結果を踏まえた追加の照会を各市に行い、課題の把握・分析を行う。その結果をもとにプロジェクト会議を開催し、課題の解決へ向けた調査・研究を進めていく。当面は、その結果をもとに夏の市長会議で論点整理を行うことを目標とする。あわせて、フィールドワークの実施についても検討中。
     
  ○ホームページについて
    (事務局)
 本プロジェクトのホームページを開設する。プロジェクトの趣旨や概要、議事録の公開、関連情報の公開を想定している。 
   
(了)